今回からは、転移と誤用についてみていきたいと思います。
いわゆる言語習得においてよく起こる間違いの勉強です。失敗から学ぶという方法になっています。
どのように間違えるかが分かれば、教え方に応用を利かせることができます。
まずは大まかにみていきましょう。
転移
転移とは、第二言語を習得する際に、母語が影響することです。
例えば、中国語に「时间」という単語があります。どんな意味だと思いますか。もし中国語がわからない人は、ぜひ推測してみてください。
はい。答えは「時間」です。
漢字が似ていませんか?もしかしたら推測できた人も多かったかもしれません。
このようなことは中国語の文を見てみるとよく起こります。中国の人に何かを伝えたかったら、漢字に変換すると伝わることが結構あります。なのでもし中国語を学ぶのであれば、漢字が分かれば勉強しやすい面があります。日本語が影響していますね。これが転移です。
もちろん、日本語から中国語への転移があるので、逆の中国語から日本語への転移もあります。
実際に中国からの留学生は、非漢字圏の学生より読解の成績がよい傾向があります。
このようにいい影響があることを正の転移と言います。
反対に、よくない影響を与えることがあります。
有名な例ですが、「手紙」と「湯」という中国語の意味を先ほどのように考えてみましょう。
いやいや簡単だよ、そのままじゃんと思うかもしれませんが、なんとそれぞれ「トイレットペーパー」と「スープ」という意味だそうです。
日本語とは意味が全く違いますよね。意味が違うからこそ、混乱してしまいそうです。
このようによくない影響を与えることもあります。このことを、母語の干渉、または負の転移と言います。
最近では、負の転移という言い方をすることが一般的なようです。
転移には、文法、語順、発音、語彙などさまざまな場所に現れます。
みなさんは、どんな例が思いつきますか?
誤用
誤用とは、文字の通り、間違った使い方のことですが、ここからいろいろな分類に分かれます。
今回は、ミステイクとエラーの2つに大きく区別しましょう。
日本語の感覚だとミステイクもエラーも同じじゃないの?と思ってしまいそうですが、明確に異なるので、混同しないようにしましょう。
ミステイク
ミステイクとは、ただの言い間違いのことです。うっかりミスのことです。
「ミスったー!」という言葉をよく聞くように、日本語の「ミス」は「ミステイク」の省略形ですね。
ミステイクは学習者に限らず、母語話者でもよく経験します。
うっかりミスですから、正しい言い方もわかっている母語話者でもしてしまうということです。
言葉を噛んでしまうこともミステイクですね。
エラー
エラーとは、規則などをちゃんと理解していないことによる間違いです。
こちらはうっかりミスなどではなく、がっつりエラーです。
「エラー」はパソコンのような機械でよく使われ、エラーが出てしまったら思ったことができずに作業が止まってしまうなんてことをイメージしていただくと、エラーのイメージが掴みやすいと思います。
間違いであることに気づいていないことによって起こってしまうため、繰り返し起きやすいです。
例えば、失敗してしまったので「名誉返上のため」とか「汚名挽回のため」という言葉を言ってしまうのは、間違って覚えていることがほとんどなので、エラーだと言えます。
まとめ
<転移>
母語が第二言語習得に影響を与えること
いい影響:正の転移
悪い影響:負の転移、母語の干渉
<誤用>
間違った使い方のこと
ミステイク:うっかりミス
エラー:がっつりエラー
おわりに
今回は大まかですが、転移と誤用を見てきました。
教師として、学生ができないのは単なる勉強不足だと決めつけるのではなく、このような背景があるのだと知っておきましょう。
また、間違いが起きてしまっても、すぐにエラーとして直してあげるのではなく、本当にエラーなのか、実はミステイクなのかを見極めてから指摘してあげることも大切です。エラーなのに注意されたら学生も不快感をもってしまうかもしれません。
参考にした本
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