態⑦〜授受表現〜

今回は授受表現です。

授受表現は教材によっては態に含まれていないこともあるのですが、今回は態として扱います。

もくじ

授受表現とは

授受表現とはその名の通り、物や動作の授受を表します。

難しい言葉で言ってもしょうがないので、簡単に言うと、「あげる」「もらう」「くれる」の3つの言葉のことです。具体的な言葉を聞くと、とても簡単ですね。

しかし、学生にとってはとても複雑です。

物の授受と恩恵の授受の2つの用法に加え、3つの使い分けが非常に大変になるからです。

それぞれ順番に見ていきましょう。

物の授受

物の授受とは物のやりとりのことです。

特徴は「あげる」「もらう」「くれる」が単独で動詞として使われます。

・私が友達にプレゼントをあげた
・私が両親に時計をもらった
・おじいちゃんが私にお小遣いをくれた
このようなものが簡単な例です。
「プレゼント」「時計」「お小遣い」のようながやり取りされているのがわかります。

恩恵の授受

一方で、恩恵の授受とは、行為のやりとりのことです。

行為のやりとりと聞いてもあまりピンとこないかも知れませんが、例を聞くとわかりやすいと思います。

・私が恋人にプレゼントを買ってあげる
・兄に宿題を手伝ってもらう
・親切な人が荷物を持ってくれた
このようなものです。
特徴としては、「あげる」「もらう」「くれる」が単独では使われておらず、他の動詞といっしょに使われています
「買う」「手伝う」「持つ」という動詞のテ形に接続していますね。

使い分け

先ほど使い分けが複雑だと紹介しましたが、なぜ複雑なのか簡単に触れておきます。

英語の話になってしまいますが、英語には授受の表現は “give” と “receive” の2つがあります。一方、日本語には3つありますね。「あげる」「もらう」「くれる」です。

2つしかないものを3つに分けるとなると大変ですよね。これが誤用が発生する理由です。

それではどうやって使い分けるかを見ていきます。

授受において大切なのは「ウチ」と「ソト」の概念です。

ウチとは、話者や話者がより近しいと感じている人のことで、ソトとは他人やより距離感のある相手だと思えばいいと思います。

「あげる」は ウチ→ソト

「もらう」「くれる」は ソト→ウチ

この矢印の方向へものや行為が移動します。

上記の例を使って例で見てみましょう

①私が友達にプレゼントをあげた
②私が両親に時計をもらった
③おじいちゃんが私にお小遣いをくれた

①では、私と友達が登場しています。

まず動詞は「あげる」なので、プレゼントは「私→友達」への移動です。

私=ウチ、友達=ソト なので、「ウチ→ソト」になっていますね。

です。

②も同様に考えると、「もらう」は「両親→私」で、

私=ウチ、両親=ソト なので、「ソト→ウチ」への移動になっています。

③も同様に、

「くれる」は、「おじいちゃん→私」なので、

「おじいちゃん」=ソト、「私」=ウチ で、「ソト→ウチ」になっています。

「私以外」がウチの場合

これまでは「私」が登場していました。

それでは私が登場しない、つまり、第三者間のやりとりではどうなるのでしょうか。

結論から言うと、「もらう」と「くれる」は基本的には第三者間のやりとりには使えませんが、話し手が、ウチ、つまり私に属する人だと思えば使うことができます。

・AさんはBさんにお金を(もらった/くれた)。

という文について、

ウチ・ソトの関係をということをわかりやすくするために、言葉を変えてみます。

A=乗客(ソト)B=私の祖母(ウチ)のとき、

・乗客私の祖母に席を譲ってもらった。(×)
・乗客私の祖母に席を譲ってくれた。(○)

A=私の祖母(ウチ)B=私の祖母(ウチ)のとき

・私の祖母乗客に席を譲ってもらった。(○)
・私の祖母乗客に席を譲ってくれた。(×)

このことを考慮して構文にしてみると、
ウチはソトに〜もらう。」
「ソトはウチに〜くれる。」
という理解でいいのかなと思っています。
ここで、「あげる」は?と思う人もいるかもしれませんが、「あげる」はちょっと特別です。
基本的には先ほどのように、ウチ→ソトの方向でいいのですが、ソト→ソトでも使うことができる点で、特別です。
加藤さん高橋さんに席を譲ってあげた。
高橋さん加藤さんに席を譲ってあげた。
どちらでも正しいですね。

まとめ

まとめると以下のようになります。

〜授受表現〜

①物の授受・・・もののやりとり
 ②恩恵の授受・・・行為のやりとり

ウチはソトに〜をもらう。
ソトはウチに〜をくれる。

おわりに

授受表現は我々からすると当たり前のように使えていますが、学生にとっては誤用が非常に多いです。

初級で授受を扱うと思うのですが、その学生にウチ・ソトなんて言葉を使ってもわかってもらえるはずもありません。

さらに、敬語を学ぶと、「ていただく、てくださる」にもつながるのので、さらにややこしくなります。

どう噛み砕いて消化するのかというのが、教師としての力量が試されるのかなと思っています。

私もまだまだ力不足な点が多いですが、わかってもらえるような授業ができるように心がけたいなと思います。


参考にした本

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この記事を書いた人

日本語講師として日本語学校に勤めています。日本語教育能力検定試験や日本語教育や現場についていろいろアウトプットしていこうと思っています。

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