文構造について〜述語〜

今回からは日本語の文の構造について見ていきたいと思っています。

イメージとしては、中高の時の英語の授業です。

今回は最重要といっても過言ではない「述語」を扱います。

なぜ「述語」だけ?

多くの人は、「え?主語は?」と思うかもしれません。

英語や国語の授業で、主語と述語はよく耳にします。そして、主語と述語はセットというイメージを持たれている人も少なくないと思います。

学校文法ではこのように勉強しましたが、いったんそのことを忘れてもらう必要があります。

なぜなら、日本語教育という点では「述語中心」が重要であり、学校文法とは考え方が異なるからです。

日本語教育能力検定試験を勉強する人なら覚えなければなりませんが、三上章という人は「主語廃止論」ということを唱えているくらいなのです。

日本語教育における述語

先ほども書きましたが、日本語教育では「述語が中心」と考えます。

述語が中心となり、さまざまな成分から構成されます。

まず、成分というのは文の要素のことです。

「ごはんを食べます。」の「食べます」の成分は「ごはんを」になります。

ちょっとわかりにくいのでイメージ図を作ってみました。

「田中さんがお昼に公園で弁当を食べる。」の文を述語中心で捉えると以下の様になります。

述語中心のイメージ

ここでは主語にあたる「田中さんが」が他と比べて目立っているわけではなく、他の成分「公園で」「お昼に」「弁当を」と対等な働きであるとわかりますね。

これが述語中心という意味です。

ちなみに学校文法ではメインに主語と動詞があり、それプラス成分があるという考え方をします。

さて、述語についてですが、日本語では一般的に文の最後にきます。

その最後に来る言葉の品詞によって、述語は3種類に分けられます。

それぞれ、名詞文動詞文形容詞文と言います。

名詞文

名詞文とは、「私は学生です。」のように文の最後が名詞で終わる文のことです。

この場合は、「学生=名詞」ですね。

述語が名詞の文は3種類ありました。覚えていますか。

指定文、措定文、うなぎ文がありましたね。

 

名詞述語文の説明はこちら

助動詞とは 助動詞という言葉を聞くと、英語を思い出す人も多いかもしれません。 can やmay を助動詞だと思い出すかもしれません。 基本的には同じようなものだと考えて良いと思いますが、違いもありますので、注意しておきましょう[…]

 

動詞文

動詞文とは、「ご飯を食べます。」のように文の最後が動詞で終わる文のことです。

「食べます=動詞」ですよね。

形容詞文

最後に形容詞文とは、「りんごは赤い。」のように文の最後が形容詞で終わる文のことです。

「赤い=形容詞(イ形容詞)」ですね。

もちろん、ナ形容詞で終わることもできます。

「太郎さんは元気です。」というのがその例です。

述語と結びつく成分

次は述語とつながる成分についてみていこうと思います。

「くれました」が述語だとしましょう。

「くれました」だけだと、意味がわからないので言葉を補ってみます。

①「田中くんが弟に誕生日プレゼントをくれました。」
この例文では、述語「くれました」に「田中くん」、「弟」、「誕生日プレゼント」の3つの成分がくっついていることがわかります。
上の例文を読んだら、意味はわかりますが、これはどうでしょう。
②「田中くん 弟 誕生日プレゼント くれました」
これはちょっとわかりづらいと思います。
②では、①の例文と同じ意味だと推測できるかもしれませんが、解釈次第では、弟から誕生日プレゼントをもらった話を田中くんにしているとも考えられます。
このように文の意味の曖昧さを回避するために「格助詞+名詞」で一つの成分とすることで、誰がプレゼントをあげた人なのか(田中くん)、誰にプレゼントをくれたのか(弟)、何をくれたのか(誕生日プレゼント)のようにはっきりと意味を伝えることができます。このような述語と成分との関係を格関係といいます。
この格関係を表す助詞のことを格助詞と言いましたね。
今度はこの3つの例文を見てください。
①「田中さんが公園でお弁当を食べた。」
②「田中さんが公園で食べた。」
③「田中さんがお弁当を食べた。」
何か変な文が1つあったと思います。何番だと思いますか。
そうですよね。②番です。
どうして②だけ違和感があるのでしょうか。
3つの文は「田中さん」「公園」「お弁当」に格助詞がくっついて「食べた」の成分になっています。
実は、「食べる」という述語には一緒に使われる成分が存在します。ゲームでよくある隠しステータスのようなものですね。
母語話者なら感覚でわかると思いますが、それは「誰が」と「何を」です。
一方、あってもなくてもいい成分もあります。例えば「どこで」「だれと」などです。
この必ず必要な成分を必須成分、どちらでもよい成分を随意成分と言います。
その点を考慮すると、
①は2つの必須成分(「田中さんが、お弁当を」)に1つの随意成分(「公園で」)なので問題なく正しいです。
③は随意成分(「公園で」)はありませんが、2つの必須成分(「田中さんが、お弁当を」)はあるので、これも問題ないです。
一方で②については、随意成分(「公園で」)は1つあるものの、2つなければならない必須成分が1つしかありません(「田中さんが」だけ)。これでは正しい文とは言えません。

文型という考え方

この必須成分という考え方はめちゃくちゃ大切です。

先ほどの「食べる」の例だと、

必須成分は「〜が〜を食べる」という形をとることがわかります。

「食べる」は2つの必須成分を伴うので、2項動詞とよばれます。

「紹介する」という動詞なら、

必須成分は「〜が〜を〜に紹介する」という形をとります。

よって「紹介する」は3項動詞ですね。

母語話者であれば、何項動詞なのか感覚的にわかりやすいので、ぱっと聞いて頭に浮かびにくいと思われる0項動詞の「春めく」や「停電する」は覚えておいたほうがいいと思います。

このように成分の数によって「○項動詞」と言います。

さて、この格助詞と述語のパターンのことを文型と言います。

ふーん、そうですか。。。

と思ってしまいそうですが、実際に教えるときにかなり役に立ちます。

例えば、学習者の苦手なものの1つに助詞があります。

下の( )に助詞を当てはめてみてください。

①名古屋( )勤めています。
②名古屋( )働いています。

①が「に」②が「で」というのは良いと思います。

学生は「場所の言葉の後は『で』」という間違ったルールを覚えている人が多いです。

そうじゃないよとことばで説明しても、初級の学生にはいまいちピンとこないことが多いように感じます。

そこで文型、つまり述語とセットで使う言葉を教えておくと何も小難しい説明は必要なくなります。

働くは「で」、勤めるは「に」だけで終わります。(もちろん例文も一緒に提示してあげるとよいです)

ぜひ教壇に立つ際はこの文型という考え方を使ってみると良いかもしれません。

まとめ

まとめると以下のようになります。

ーまとめー

日本語教育:述語中心
文の種類
名詞文・形容詞文・動詞文
成分
名詞格助詞
必須成分or随意成分
文型=必須成分+述語

おわりに

今回は文法の基本の基本にあたる内容だったんじゃないかなと思います。

これから少しずつ文法についての記事を増やしていこうと思っていますが、文法は深く勉強しようと思うといくらでも深淵に踏み込んで出られなくなってしまいます。

研究者や教師として深く勉強するのは良いことですが、日本語教育能力検定試験の合格という立場では浅く広く、シンプルに捉えられるように勉強していくのが良いと思います。試験の範囲は文法以外にもたくさんあるので、そちらもしっかり勉強しなければなりません。

 

 

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