今回は特殊音素の最後である引く音です。
引く音の他にも、長音といったりもしますね。
長音とは、前の母音を1拍伸ばすものです。
この長音は音素の記号では /R/ と書きます。
なんとなくwaterをウォーター、worldをワールドということからも
Rの文字を使うのはイメージしやすいのかなと思います。
長音の基本の表記
文字の表記
・平仮名では前の母音を付け足す。
これが表記の基本です。
先ほどの「カール」で見てみましょう。
「カル」という言葉に長音を入れようと思います。
「カール」のようにしたいので、「ー」を「カ」と「ル」の間に入れます。これは、感覚的にわかると思います。
では、「おかさん」を「お母さん」にしてみましょう。「ー」をいれて「おかーさん」としたいところですが、
「おかーさん」という表記はひらがなではしません。カタカナだけです。
そこで、前の文字である「か(ka)」の母音部分の「a(あ)」をつけます。
ですから、「おかーさん」ではなく、「おかあさん」と書くわけですね。
これは経験的に理解している人がほとんどだと思います。
IPAの表記(発音の表記)
もう一度、次は「おじさん」と「おじいさん」の言葉で見ていきましょう。
「おじさん」の「じ(ʑi)」の母音である「i」を1拍加えることで、「おじいさん」の「じい(ʑii)」と発音しますね。
この長音のIPAの表記は [ː] で表されます。
英語の勉強の時に見たことがある方もいると思います。
よって、
おじさんは [oʑisaɴ] 、おじいさんは [oʑiːsaɴ] のようになります。
基本的に前の母音と同じものが伸ばされます。
例えば、おかあさんは「あ」が、おにいさん「い」のような感じです。
エ段とオ段の長音はちょっと注意
基本は上記の通りなのですが、ちょっとした例外的なものがあるので、見ておきましょう。
エ段とオ段の長音はやや注意が必要です。
例えば、「携帯電話」はなんと読みますか。
そうですよね。
読み方は「けいたいでんわ」です。
ですが、多くの方はこれを読むとき、
「けーたいでんわ」のように読みませんでしたか。
「けいたいでんわ」ではなく「けー(え)たいでんわ」と読みませんでしたか。
実際に発音してみれば分かりますが、「え(ー)」で発音した方が楽に発音できませんか。
このように、表記では「けいたいでんわ」でも、実際に発音してみると「けーたいでんわ」のようになってしまう。
表記では「い」でも、発音すると「え」になってしまうということがあるのです。
つまり、表記と音声にズレが生じてしまうことがあるので、エ段とオ段は注意しましょう。
他の例を挙げてみると、
王様「おうさま」、行動「こうどう」、経験「けいけん」、丁寧「ていねい」など。
そして、実際は、
「オーサマ(おおさま)」
「コードー(こおどお)」
「ケーケン(けえけん)」
「テーネー(てえねえ)」のように読みますよね。
ただし、いつも起こるというわけではなく、起きない例もあるので気を付けましょう。
お姉さん「おねえさん」、通る「とおる」、氷「こおり」などなど。
おわりに
長音は細かく考えると大変そうですが、伸ばす音だという認識でも十分な気がします。
特殊音素は終わりですが、何よりもまず、撥音の「ん」をしっかり勉強するのがいいと思います。
また特殊音素は何より、学習者にとってとても難しい範囲でもあります。
何か楽しく身につける方法など試行錯誤していきたいと思いますね。
参考にした本