外国語教授法③〜オーディオリンガル・メソッド等〜

もくじ

前回まで

教養のための外国語学習(読解中心)から、産業革命の影響で、もっと使えるようにする教授法が必要性が高まり、グアンさんとベルリッツさんは赤ちゃんが言葉を獲得するプロセスに注目したナチュラル・メソッド(音声中心)をグアン・メソッドベルリッツ・メソッドという方法で外国語を教えました。

 

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はじめに

前回の記事でナチュラル・メソッドはのちに直接法と呼ばれると書きましたが、ナチュラルメソッドは19世紀後半から、これからやる直接法は20世紀からの直接法と赤本で区別されています。

イメージとして、時代がすすんできたので、教授法の質も良くなってきているんじゃね。という感じで僕は理解しています。

オーラル・メソッド

このオーラル・メソッドはパーマーさんが作りました。パーマーさんは言語を「規範としての言語」と「運用としての言語」とに区別しました。

そしてさらに運用としての言語が重要と考え、運用には「照合」と「融合」があり、その後者の「融合」が言語の運用のために重要と捉えました。

例えば、日本語母語話者なら、「りんご」という言葉を聞くと、りんごは、「り」と「ん」と「ご」の文字からできているとか、赤くて丸い果物ということより、まず初めに、りんごの映像が頭に浮かぶのではないでしょうか。これが「融合」です。これをできるようにするべきだと考えたのがパーマーさんです。

会話するときに「リンゴを3つ買ったんだよ」と雑談をしたとき、「り、、、ん、、、ご、、、、ああリンゴね」のような反応をされても困りますよね。

「聞く」「話す」を第一技能、「書く」「読む」を第二技能とし、第一技能の習得を優先させました。よりコミュニケーションが意識されてる気がします。長沼直兄さんによって日本語教育に導入されました。今の教育に近づいている印象も受けますね。

アーミー・メソッド

アーミー・メソッド、別名ASTP(Army Specialized Training Program)がアメリカによって開発されます。アーミー、、、名前から、作られたのは第二次世界大戦後半であります。なんで、戦争の真っ最中に教授法が作られたのか。そうですね、対戦国の情報を知るためですね。諜報活動のためです。対戦中なので、情報は何より大事です。構造言語学と行動心理学がキーワードです。

構造言語学や行動心理学の説明は色々な場所で説明されますが、いまいちピンとこなかったりわかりにくいのが正直でなところです。僕の理解としては、少し乱暴ですが、構造言語学は「文型(構造)」と「音」、行動心理学は「刺激」「反応」「強化」による習慣形成という風にざっくり捉えています。

さて、話は戻って、アーミー・メソッドとは、言語の構造の特徴を母語で学び、ドリルマスターと呼ばれるネイティブスピーカーによって口頭練習を行い、基本の文を完全に暗記します。

あれ?と思った方いますか?鋭いです。なんか学校の英語の授業に似てますね。次の教授法でしっかり触れますが、ここでは我々が体験した英語教育の原型みたいなものです。原型なので違いはあります。

これは「アーミー」メソッドです。なんか僕の勝手なイメージですが、とっても厳しいイメージがあります。短期集中で、「集中的に」口頭練習をさせられ、「徹底して」暗記させられる。めちゃめちゃ大変そう。。。もちろん長所として流暢な話者を生み出せることがありますが、短所として、やっぱり辛い、辛い、辛いだと思います。軍隊だからこそできた方法だと思います。

これがアーミー・メソッドです。

オーディオ・リンガル・メソッド

厳しすぎるアーミー・メソッドでしたが、結果としては大成功。大変とはいえ結果は残せたので優れた方法です。そこでより一般向けに改良されたのがこのオーディオ・リンガル・メソッドです。アメリカのミシガン大学で生まれ、フリーズさんがその生みの親です。これは戦後の1950〜1960年代であり、冷戦下のソ連との宇宙開発に遅れをとったことから外国語教育に力を入れました。もしかしたら、英語を広め、世界共通語にして優位を取ろうとしたのかもしれません。

原型はアーミー・メソッドですので基本は変わりません。構造言語学と行動心理学に基づいています。そして「正確さ」も新しいキーワードだと思います。パターンプラクティスミムメム練習ミニマルペアなんて言葉を特徴としてあげられます。

ここで僕は中学校の英語の授業を思い出します。テキスト名は忘れてしまいましたが、左のページに短い会話が書いてあり、CDに続いて音読させられた記憶があります。また別のテキストで、英語の構文がズラーっと羅列されたものを使い、毎週10から20ほどの構文を丸暗記し、確認テストというテストで合格するまで追試ということをしていたのは懐かしい思い出です。先生はネイティブではなかったので、CDを真似して繰り返しました。

ミムメムとはmimicry-memorizationの頭文字3つのことで、真似して記憶するということです。昔、ドラゴンクエストというゲームに、ミミックという宝箱そっくりなモンスターがいて、お宝を取ろうとしたらミミックだったということがあったんですけど、その名前の由来はmimic(真似する)なんですね。 なのでCDの音声をミミックする。これがミムメム練習。実際はCDは当時なかったのでLL(ランゲージ・ラボラトリー)と呼ばれる教育機器やテープレコーダー。現代社会でいうCDという認識で良いと思います。こういったことから、ネイティブの自然なスピードや基本的に媒介語も使わないことも重視されていました。

文型が大事ということで、文型を覚えたかのテストで、暗記した文を書いたりり、空欄を埋めたり、文型を使った英作文をしたりした記憶はありませんか。このような文型練習をパターン・プラクティスと言います。その練習は種類があり、そのまま繰り返すという反復ドリル、文の語を入れ替えるという代入ドリル、活用を変えるという変形ドリル、不完全な文を完全にするという完成ドリル、徐々に文を長くする拡張ドリル、複数の文を一つにする結合ドリル、質問に答える問答ドリルがあります。

やはり文型を覚えるのは大変ということで、色々飽きさせない工夫がされていると思います。僕は学生の時飽きてしまいましたが、、、。ドリルについては別の機会に触れたいと思います。ちなみに、ドリルとはあの何かを削るドリルではありません。英語で訓練という意味があります。漢字ドリルは漢字を削るものではなく、漢字の訓練という意味だったんですねえ。僕はずっと削るドリルだと思ってました。。

オーディオ・リンガル・メソッドのキーワード、ミム・メム練習パターン・プラクティスをやりましたが、もう一つあります。ミニマルペアです。似た音で意味を区別させます。たとえば、日本語なら、「きて」「きって」「きいて」、英語なら、「sink(沈む)」と「think(考える)」あたりでしょうか。日本人なら「rice(米)」と「lice(しらみ)」にも気をつけたいですね。構造、音声を重視するからこういう練習が行われるわけです。じつはこれに関して、僕は学校でやった記憶がないです。僕が忘れているだけなのか、または教師もネイティブじゃなかったので難しかったかもしれません。

・長所は文法の体系的学習や正確性の向上

・短所は単調でつまらない、形重視のため、意味がおろそかになり、結果としてコミュニケーション能力が育たない

ということで、オーディオ・リンガル・メソッドは、コミュニーケーション能力が育ちにくいという残念な結果になってしまいましたが、世界的な一般として認められています。というのも科学に基づいているので信頼性が高いことや、教師はネイティブが望ましいが、CDなどの音声教材があればいいこと、100人規模だろうが授業として成り立つなど効率的なものが良かったんだろうと思います。

もちろん、本末転倒なので、おかしいだろということで批判がなされ、コミュニケーション能力を育てる教授法がでてきます。それを次にみていきたいと思います。。

おわりに

いかがでしたか。今回はちょっとボリュームが重たくなってしまいました。胃もたれしてしまいましたか。内容はなかなか大変なんですが、大まかな流れとして、「教養」→「実用」があり、「実用」の中身が「ナチュラルメソッド、オーラルメソッド、そしてオーディオリンガルメソッド」へ流れているという大まかな枠組みを頭に入れながら勉強すると整理しやすいと思います。ここで注意したいのは、何年から何年には何々教授法のようにがっちり考えないことだと思います。衰退したから全く使われないわけでもなく、同時期に一つの教授法しか流行していないなんてこともないので、やんわり流れを頭に入れていきましょう。

 


参考にした本

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この記事を書いた人

日本語講師として日本語学校に勤めています。日本語教育能力検定試験や日本語教育や現場についていろいろアウトプットしていこうと思っています。

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