今回は使役受身です。
使役受身は学生にとっても最難関の文法の一つだと言ってもいいと同時に、
教える側の立場だとしても、気を抜くと混乱してしまいそうな文法です。
そのような難しい文法なので、注意して覚えてしまいましょう。
使役受身とは
使役受身とはその名前の通り、使役と受身がいっしょになった文法です。
実際にどんなものなのか例文を見てみると、
・私は母親に部屋を掃除させられた。(させる+られる)
子供は母親に苦手な野菜を食べさせられた。(させる+られる)
このように「させる」の使役と「される」の受身が一緒になっています。
使役受身の作り方
使役受身はその名前の順番通り、使役を作ってからそれを受身にして作ります。
下の例がその例です。
母親は子供に部屋を掃除させる。(使役)
↓
子供は母親に部屋を掃除させられる。(使役+受身)
使役は語幹に「(s)ase」をつけました。受身は語幹に「(r)are」をつけました。 *()は2グループ の時。
「行く」のような元々1グループの動詞でも、使役の動詞は「語幹+ase-ru」のような形をとるので、全てが2グループ の動詞ということになります。
「行く」・・・1グループの辞書形
「行かせる」・・・使役動詞の辞書形(2グループになる)
よって使役受身は語幹に「(s)aserare」をつければいいということになります。
1グループの動詞の使役受身
「書く(kak-u) 」 →「書かせられる(kak-aserare-ru)」
「飲む(nom-u)」 →「飲ませられる(nom-aserare-ru)」
「話す(hanas-u)」 →「話させられる(hanas-aserare-ru)」
同様に2グループの動詞である「食べる(tabe-ru)」「つける(tuke-ru)」などは「saserare」をつければ良いので
2グループの動詞の使役受身
「食べる(tabe-ru)」 →「食べさせられる(tabe-saserare-ru)」
「つける(tuke-ru)」 →「つけさせられる(tuke-saserare-ru)」
3グループは「させられる」と「こさせられる」です。
使役受身の作り方の注意
作り方は上記の通りですが、気をつけなければならないことがあります。
もしかしたら、1グループの使役受身の形に違和感を覚えた人がいるかもしれません。
実は1グループの使役受身には短縮形が存在します。
「書かせられる」が通常だとすると、の短縮形は「書かされる」
「飲ませられる」の短縮形は「飲まされる」です。
前回の使役の記事で触れた短縮形を受身にすれば作ることができます。
こちらは語幹に「asare」をつけることで作ることができます。
ただし、使役の時と同様、サ行の子音動詞は短縮形がないので、通常の形で言いましょう。
そして、お気づきの人も多いと思いますが、短縮形は日常の会話で本当によく使用します。
通常形に違和感を覚えるほどです。
使役動詞の意味
受身、使役とやってきましたが、使役受身は受身や使役と違い、意味はとてもシンプルです。
使役受身は基本的にはやりたくないことをやらされるということを表します。
例文を見れば分かりやすいと思います。
母親に苦手なピーマンを食べさせられた。
宿題で漢字を10回ずつ書かされました(書かせられました)。
一応他の意味として、何かしらによって感情がでる時も使います。
息子にはがっかりさせられましたよ。
あの試合展開にはヒヤヒヤさせられましたね。
がその例です。
まとめ
まとめると以下のようになります。
使役受身の作り方
「①使役にする → ②受身にする」の順番
*短縮形もあるので注意
使役受身の意味
・やりたくないことの強要
・感情が引き起こさせられる
おわりに
使役受身は日本語母語話者にとっては、作り方さえ間違えなければそれほど難しいものではないと思っています。
しかし、学習者にとってはただでさえ難しい使役に受身まで加わっていることから、形を作ることから最高難易度の文法になっていると思います。さらに、態は主語との関係性があるので、「誰が」「誰に」「する・される・させる・させられる」のかとても混乱しやすいです。
教師側(私)も気を抜くと通常の形のときに短縮形を言ってしまいそうになったこともあります。
日本語教育能力検定試験ではそれほど時間を使う文法ではないかもしれませんが、教えることになったら時間を使って勉強したほうがいいことを覚えておくといいと思います。
参考にした本
コメント