前回は合成語について勉強しました。

前に一度簡単に触れた変音現象について今回は前回紹介した例も含めて、見ていこうと思います。

 

合成語を確認する!

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変音現象とは

人間も語も似ていると言ってもいいかもしれません。

人間が一緒になると、残念ながらこの人とは合わないということが起こってしまいます。

語も一緒になるとき(合成される)ときにはやはり相性とでもいいましょうか、問題のない相性もあれば、すんなりといかない相性もあります。

人間関係ですんなりとはいかない、でも一緒にならなければならない場合、例えば苦手な人とプロジェクトを組むことになってしまったのように、相性が悪くてもやらなければならないことがあります。

そんな時はうまく妥協点を探すしかありません。例えば、休日は返信しないと取り決めるなどです。

語も同じで、すんなりとはいかない相性の時は妥協点を見つけようとします。

それは音を変えるということです。

つまり、語を合成する時、語を合成するときに音が変わってしまうことがあるということです。

「和(わ)」と「服(ふく)」の合成では「和服(わふく)」で何も問題ありません。

しかし、「雨(あめ)」と「雲(くも)」が合成されると、「雨雲(あまも)」となってしまいます。

このように、語が合成されるときに音が変わってしまうことを変音現象と言います。

変音現象は8パターンあります。多いですね。

ちなみに語の相性の記述はあくまで私のイメージです。ご了承ください。

変音現象の8種類のパターン

連濁(れんだく)

これは以前の記事でも説明しました。

連続する形態素の後ろの形態素に1文字目が濁音化する。これが連濁です。

もっと単純にいうと、連続する2文字の後ろの文字に濁点がつくことです。

「本(ほん)」と「棚(たな)」を合成すると、「ほんな」のように濁点( ゛)がつきます。

高野豆腐のような4文字でも「野(や)」と「豆(とう)」の合成なので「高野豆腐(こうやうふ)」となります。

この連濁は本当によくみられる変音現象のひとつです。

ただ注意しておきたいことは、先ほど相性が良い場合もあるといったように合成する際、100%連濁が発生するわけではないということを覚えていきましょう。

その他の連濁の例

「攻略本(こうりゃくん)」「因果(いん)」「B組(びいみ)」などが考えたら出てきました。

ちなみに「連濁」という言葉は、「濁」がもともと「だく」と読むので、連濁していません。

ただし、「連濁って前と後どっちに濁点をつけるんだっけ?」となってしまったら、

と同じ2文字目に濁点をつけるといいというヒントにはなります。

転音(てんおん)

これも以前に紹介しました。

連濁では連続する形態素の後ろ側が変化しましたが、転音では前の形態素の最後の母音が変化します。

つまり、連続する2文字の1文字目の母音が違う母音になるということです。

このことからでしょうか。母音交替とも呼ばれます。

「酒(sake)」と「屋(や)」で「酒屋(さかや)」ですが、前の形態素の最後の「e」が「a」に、他の母音に変わっていて、「sakaya」になっています。

他にも

「雨雲(あぐも)」、「風上(かかみ)」、「爪楊枝(つようじ)」などがその例です。

 

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音便(おんびん)

ここからは、以前は扱わなかったことです。

音便という言葉は学校教育で聞いたことがある人も多いと思います。

音便とは連続する2つの形態素の前の要素が撥音や促音などに変わることです。

つまり前の文字の最後が音がイ、ウ、ッ、ンの音に変わってしまうことです。それぞれイ音便、ウ音便、促音便、撥音便と言います。

例えば

イ音便とウ音便はそれぞれ、「高き→高い」「おはやい→おはよう」のようなものです。

「ぶつ(打つ)」と「なぐる」で「ぶんなぐる」と言いますが、「つ」が「ん」に変わって撥音便化しています。

「ぶつ」と「とばす」で「ぶっとばす」と言いますが、「つ」が「っ」に変わって促音便化しています。

暴力的な例ですみません。

ポイントは文字の一部が変化して「イ、ウ、ッ、ン」に変わっているということです。

音韻添加(おんいんてんか)

音韻添加とは「加」の漢字があることからも推測ができるように、合成する前の語にはなかった音が加えられることです。

二人ではどうしようもなく仲が悪い猿と犬の間に入ってなんとか落ち着いた鳥(酉)のようです。

有名な例だと「春雨」があります。「春(はる)」と「雨(あめ)」があわさると「harusame」となり「s」はどこからやってきたのかのようになります。

他の例では、「真っ白」も「真(ま)」と「白(しろ)」で「massiro」のようにこちらも「s」が加わっているので音韻添加です。

ただ注意したいのは、「真っ白」の例では「ッ」が入っていますが、促音便とは考えません。

これは「真(ま)」はそのままで変化していないからです。

音韻脱落

これは音韻添加の「加える」の字と逆の「脱落」という言葉からも推測できるように、

音韻脱落とは、合成されるときに音の一部がなくなることです。

そのままでは相性がよくない二人が、片方が妥協して何かをあきらめたらうまくいくようになった感じですかね。

例えば、「河原」は「かわら」と読むことがあります。

これは「河(かわ)」と「原(はら)」で「kawahara」ではなく「kawa(ha)ra」の「ha」がなくなっていますね。

他の例だと、「荒磯(ar(a)iso)」や「何で(nan(i)de)」や文法の「〜てます(te(i)masu)」も音韻脱落の例です。

音韻融合(おんいんゆうごう)

添加、脱落ときて次は融合です。

音韻融合は融合というくらいなので、どちらの要素も混ざったようなものになります。

イメージとしてはマーブル模様です。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、音韻融合はパターンを掴むのが早いと思います。

例として

「狩人」「素人」「弟」「若人」「仲人」などがあります。

それぞれ「かりゅうど」「おとうと」「わこうど」「なこうど」のように「うと、うど」のようになっています。

もともとは「かりひと」「おとひと」「わかびと」「なかびと」のような言葉だったそうです。

音韻添加とは違って、何となくでも融合しているニュアンスが捉えられたでしょうか。

連声(れんじょう)

次は連声です。

連声とは、2つの要素のうちの前の形態素が後ろの形態素に影響して後ろの音を変えてしまうことです。

細かくいうと、「t、n、m」で終わる前の文字が直後の「ア、ワ、ヤ」行に影響を与え、「タ、ナ、マ」行に変えてしまうことです。

ちょっとわかりにくいので、例を見ていくとわかりやすいと思います。

「因縁」は「いんねん」と言いますが、「因(いん)」と「縁(えん)」ですが、「いん」のn が「えん」のe(ア行) に影響を与え、「エ」が「ネ」に変わってしまいました。これが連声です。

他にも「観音(かんのん)」や「反応(はんのう)」もこの例になります。

もし、英語が得意な人はリンキングという言葉を聞いたことがあるかもしれません。「kind of it」を「カインドビット」のように読みます。連声はこれに近いものがあります。ただ近い、似ているだけで全く同じものではないと思います。

例えば、「本屋」という発音を「hon ya」を「ホニャ」とは言わないからです。

半濁音化(はんだくおんか)

最後は半濁音化です。

半濁音とは何かがわかればとても簡単です。

半濁音とはパ行のような「°」がある音のことです。

よって半濁音化とは、連続する形態素の後ろの要素がハ行のとき、それがパ行の音になることです。

例を挙げたらすぐにわかると思います。

「菜葉(なっぱ)」や「ぶっぱなす」がそれです。ゴルフの打ちっぱなしもそうですよね。

ただし、お気づきの通り、ただパ行になるだけではなく、菜葉のように「ッ」を加えたり、ぶっぱなすのように促音化といっしょに起きるようです。

まとめ

まとめると以下のようになります。

変音現象
連濁・・・「本棚」「攻略本」など
転音(母音交替)・・・「酒屋」「爪楊枝」など
音便・・・「ぶんなぐる」「ぶっとばす」など
音韻添加・・・「春雨」「真っ白」など
音韻脱落・・・「荒磯」「河原」など
音韻融合・・・「狩人」「若人」など
連声・・・「因縁」「観音」など
半濁音化・・・「菜葉」「ぶっぱなす」など

かなり種類も多く、大変だったと思います。

漢字から意味を推測できるようにするのも手ですが、私は例の言葉を覚えました。連濁といえば「本棚」というような感じです。

言葉からルールを探せればいちいちルールを覚える必要はありません。

補足として、音韻添加、音韻脱落、音韻融合について、古い言葉のように感じませんでしたか。例えば、「荒磯」は「ありそ」とキーボードに打っても変換されませんし、辞書には「あらいそ」と書いてあります。これは、昔の日本語では母音の連続が認められなかったから起きた現象だということを頭に入れておいてもいいかもしれません。現在では「あらいそ」や「かわはら」のように普通にいうことができます。

また、この変音現象について、赤本では第3版には詳しくありましたが、第4版ではくわしく書かれていませんでした。より広く知識をつけたい、より確実に合格に近づきたいならしっかり覚えておきましょう。

私の推測ですが、第4版で変音現象の多くが削除されていたのは、古典の言葉を中心にみられる変音現象は日本語学習者に教えるには限定的すぎると考えられたのではないでしょうか。そうだとするとより実践的になっていると考えられますね。

おわりに

前にも書きましたが、日本語教育能力検定試験に合格するためにはまずこれらの種類を知っておかなければなりません。知っておくだけでいいです。ですが、これらを学習者に説明するということを含めると。覚えるだけでは足りないということを覚えておかなければなりません。

主に、連声や転音のような変音現象を1度も学ぶことなく、使いこなせているというのは本当に凄いことですよね。

母国語話者だからあたりまえと考えるのではなく、学習者と同じ目線で学ぶ姿勢も忘れないように気をつけていたいですね。

 

 

ヒューマンアカデミー著(2016)『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第3版5刷』SHOEISHA
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