新・教授法②〜ナチュラル・メソッド〜

前回は文法訳読法についてみました。

エリートになるために教養として外国語(ラテン語)を勉強していました。特に読解力を上げるためのものだったので、音声面においての弱点がありましたね。

 

文法訳読法とは

今回は文法訳読法の説明をしていきます。 教科書などではあまりページ数を使っていることはない印象ですが、最初に学ぶ教授法ということで大切な要素がしっかりと詰まっていると思います。 また教授法を流れで見るときにも大切なので、しっかり[…]

 

教養から実用へのシフト

文法訳読法は19世紀半ばぐらいまで数百年も続いてきました。長いですね。

しかし、18世期後半から19世紀にかけ、産業革命がおきました。

世界史で聞くような言葉を見ると拒絶反応が起きてしまう人もいるかもしれませんが、大切なのは、産業革命によって、鉄道や蒸気船が生まれたということだけです。

遠く移動できる手段ができたことで、人や物の移動も活発になり、交流や貿易も活発になり、そのためにはコミュニケーションする必要性が出てくるのは容易に連想できます。海外の文化がある程度浸透している現在でさえ、海外のあまり聞かないグルメや文化がどんどん日本へ輸入されていてそれがビジネスになっていることを考えると、当時はまさに革命的だったのではないかと思います。

とにかく、コミュニケーションの必要性が高まってきたのに、読解力を身に着ける勉強をしているというのは変ですよね。

そのような流れから、読解じゃなく、音声。つまり、実用目的に切り替えようとなってくるわけです。

今までは文法訳読法で学んでいましたが、今後新しい話せるようになる教授法を作る必要がありますよね。

そこで登場したのがナチュラル・メソッドです。

ナチュラル・メソッド

ナチュラル・メソッドとは、文法訳読法への批判から作られた教授法で、幼児の母語習得の順序に注目した音声重視の教授法のことです。つまり、幼児がどうやって話せるようになったのかというプロセスに注目した教授法だということです。

さらに具体的に言い換えると幼児は「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」の順で習得するのだから、その順番にやっていこうと言うものです。「聞く」ことが最初になっているのがポイントです。

ナチュラル・メソッドのナチュラルは「音声」を「自然(natural)」に学ぶと考えるとイメージしやすいのかなと思います。また後でナチュラル・アプローチというものも出てきますが、区別として幼児が「メソメソ(メソッドのメソ)泣く」と覚えるのはいかがでしょうか。

 

ナチュラル・アプローチとは

オーディオリンガルメソッドにコミュニカティブアプローチと大変な教授法を見てきたので、ここからは負担が減ってくると思います。 今回はタスク中心の教授法とナチュラル・アプローチです。 タスク中心の教授法 オーディオ・リンガル・メソッド[…]

 

ナチュラル・メソッドは教授法の名前ではなく、グアン・メソッドやベルリッツ・メソッドという教授法の総称です。

それでは具体的なグアン・メソッドとベルリッツ・メソッドとはどのようなものなのか、見ていきましょう。

グアン・メソッド

まず、グアン・メソッドは別名「サイコロジカル・メソッド」や「シリーズ・メソッド」とも言われます。

呼び方は様々ですが、よく聞くのはグアン・メソッドでしょう。これはグアンという人によって作られたので、そう呼ばれます。

この人は、幼児の心理的発達に着目しました。

心理的発達に注目したので、サイコロジカル・メソッドともいいます。心理学は英語で「psycology(サイコロジー)」というからです。

それではグアンメソッドとはどのようなものなのでしょうか。

到達目標

話せるようになる。

これは文法訳読法の欠点だったことですね。グアン・メソッドは文法訳読法の批判から生まれた教授法なのも納得です。

練習法

これはかなり独特です。

何かの一連の動作を小さな出来事に分解し、教師が言いながら実践し、学生は再現するという練習法です。

かなりわかりにくいので、具体的に見ていきます。

例えばドアを開けるという動作は以下のように分解できます。

I walk toward the door.(ドアに向かって歩く)

I draw near the door.(ドアにの近くまで移動する)

I get to the door.(ドアまで着く)

I stop at the door.(ドアで止まる)

I stretch out my arm.(腕を伸ばす)

I take hold of the door knob.(ドアノブに手をかける)

I turn the knob.(ドアノブを回す)

The knob clicks.(ドアノブから音が鳴る)

I pull the door.(ドアを引く)

I open the door.(ドアを開ける)

これを教師が言いながら行い、学生は再現します。

このときは学生は「聞いて」から再現するので、「聞く」ことが重視されているナチュラル・メソッドなんだなと感じられますね。

ちなみに、小さな出来事に分解された「一連の、連続した」動作ということから、「シリーズ・メソッド」ともよばれています。シリーズは英語で「series」と言います。シリーズ物のドラマのように言うのでイメージしやすいと思います。

長所

音声への接触が多い。

動詞に着目。

音声への接触は文法訳読法にはなかったもので、その短所だったものがそのまま長所になっていることからも、文法訳読法の批判から生まれたということがうかがえます。

動詞に注目したのはグアンメソッドのオリジナリティを感じます。動作を分解するので自然に動詞を覚える量も増えるし便利だと思います。

短所

人によって教えられる範囲が制限される。

幼稚に感じる。

人によって考える順番は同じではないので動作の順番も人によって違いが出てくるのでうまく教えられないことがあると言う欠点があります。簡単な例だと箸で丼を食べる人もいればスプーンで食べる人もいるという感じだと思います。

また動作を実際に行うので、特に大人は馬鹿にされているようにも感じられてしまうかもしれませんね。

そして動詞以外に応用がしにくいんじゃないのかなとも思っています。

その他

おまけ程度の紹介ですが、日本語教育能力検定試験の勉強なら、このグアン・メソッドで一定の成果を収めた山口喜一郎という人もいっしょにおさえておきましょう。

ベルリッツ・メソッド

ベルリッツ・メソッドもナチュラル・メソッドなので、「聞く」「話す」「読む」「書く」の順に指導をします。

ベルリッツもグアン・メソッドと同様ベルリッツという人に作られました。ベルリッツ・メソッドの特質すべきポイントは「翻訳を排除する」ということです。

文法訳読法は「翻訳」の教授法でした。だからこそ、文法のルールをしっかり頭に入れ、翻訳することが大切でした。

しかし、ベルリッツメソッドはまさにその真逆です。そうですよね、ナチュラルメソッドは文法訳読法の批判から作られたことがここからもわかりますね。「排除」というのは強い言葉なので、グアンメソッドよりも強く批判するイメージがあればいいと思います。

それではベルリッツ・メソッドはどんなものなのでしょうか。

到達目標

話せるようになること。

グアンメソッドと同じですね。

練習法

文法や語彙は促す形で導入。

口頭練習の重視。

教師はネオティブスピーカー。

翻訳を排除すると言うことはつまり、母語は使わないということです。文法訳読法は母語で文法の説明をしましたがそれができないとなると、わかってもらえるようにさまざまなものを使います。それが絵カードやジェスチャー、レアリアや例文などです。

ナチュラルメソッドなので、上記の方法で聞く練習も行いつつ、話せるように口頭練習もするのは想像しやすいですね。

また、母語を使わないので、教師は全員訓練を受けたネオティブスピーカーです。聞くことを重視するので、正しく話せるネイティブスピーカーがいいというのも想像しやすいと思います。

長所

音声への接触が多い。

これもグアンメソッドの長所と共通しています。

短所

教師に指導技術が求められる。

わからないとストレス。

翻訳を排除したことで、教師側にある程度のレベルが求められます。例文の質や語彙コントロールなども含まれるのだと思います。

また、母語を使わないので、目標言語で話すしかなく、わからないことがあるとうまく解消できなかったり、ニュアンスが伝わりきらないと思います。特に初級レベルだと多いのかなと思います。私が高校生のころ、英語で行われる授業がありましたが、全くわからず大変だったことを思い出します。

まとめ

まとめるとこのようになります。

〜ナチュラル・メソッド〜

ナチュラル・メソッド

幼児の言語習得に注目
聞く→話す→読む→書く
グアン・メソッド
思考と動作(心理学的)
ベルリッツ・メソッド
翻訳の排除

おわりに

ナチュラル・メソッドはいかがでしたか。

個人的にはナチュラル・メソッドといえばグアン・メソッドのイメージがありますが、ベルリッツ・メソッドも大切です。

このベルリッツという言葉に聞き覚えのある方もいるかもしれません。

これはベルリッツという外国語学習の教室があり、たまに広告も見かけます。よければウェブサイトを見に行ってみてください。

面白いのは、ウェブサイトのベルリッツとはの欄に、『学問的な翻訳や文法規則にとらわれすぎず』と書いてありますが、まさに文法訳読法の批判からくる言葉だなと思って面白かったです。

また短所が教師にレベルが求められるベルリッツメソッドですが、当時はそうでも、今はオンラインなどの発展もありうまく弱点を補えている気がします。

このように勉強した知識を他とつなげられると定着につながっていいのかなと思います。

 

 

小林ミナ(2019)『日本語教育よくわかる教授法』アルク
高見澤孟著(2018)『新・初めての日本語教育2[増補改訂版] 日本語教授法入門』アスク出版
西口光一著(2017)『日本語教授法を理解する本 歴史と理論編 解説と演習』バベルプレス
ヒューマンアカデミー著(2018)『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第4版4刷』SHOEISHA

 

 

 

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