新・教授法⑥〜タスク中心の教授法とナチュラルアプローチ〜

オーディオリンガルメソッドにコミュニカティブアプローチと大変な教授法を見てきたので、ここからは負担が減ってくると思います。

今回はタスク中心の教授法ナチュラル・アプローチです。

タスク中心の教授法

オーディオ・リンガル・メソッドでは文型重視した結果、意味の練習が不足し、コミュニケーション能力が育ちにくいという欠点がありました。

そして、コミュニカティブ・アプローチではその欠点から意味を重視してコミュニケーション能力が育ちやすい一方で、文法能力が上がらないという欠点がありました。

 

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コミュニカティブ・アプローチとは

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なんとも極端な話ですよね。長所と短所が見事に逆転しただけになってしまっています。

そこで次のタスク中心の教授法は簡単に言うといいとこどりです。

コミュニケーションを重視しつつ、文法も頑張ろうという感じです。

そしてこの教授法と非常に関係があるのはロングという人です。

ロングはフォーカス・オン・フォーム(FonF)という概念を提唱しました。これがコミュニケーションの中で文法もしっかりやろうといういいとこどりのことです。

日本語教育能力検定試験では、オーディオ・リンガル・メソッドの形式重視のことであるフォーカス・オン・フォームズ(FonFs)とコミュニカティブ・アプローチの意味重視のことであるフォーカス・オン・ミーニング(FonM)との区別をつけておきましょう。

私は、フォーカス・オン・フォームズは文型をたくさんやるから複数形の「s」をつけると覚えました。

そしてもう一つロングはについて大切なことがあります。それはインターアクション仮説です。

インターアクション仮説とは第二言語習得において意味交渉によるやりとりが大切であるというもので、日本語教育能力検定試験では第二言語習得の単元でもでてきます。これもロングが提唱したといっしょに覚えておきましょう。

もう一度インターアクション仮説とは、コミュニーケーションが滞った時、どのように工夫するのかということなのですが、これってこのタスク中心の教授法と関連しているように思いませんか。

私はそう思いました。

例えば、「銀行で口座を開設する」というタスクの場合、説明の語彙が難しくなると思います。学生にとって銀行員のていねいな話し方は逆に難しく聞こえてしまうかもしれません。そこで言い換えを要求したり、ゆっくり言ってもらうことでタスク達成に近づきます。

お互いの意図が通じるように工夫することはタスクを達成するのには必須なことだと思います。

このような関連を頭に入れておくと、タスク中心の教授法と第二言語習得の一部をまとめて覚えることができると思います。

到達目標

課題遂行能力

コミュニケーション能力でも無くなってしまいました。今まではコミュニケーション能力の向上が目的でしたが、手段に過ぎなくなったということでしょう。

教材

コミュニカティブ・アプローチと同じ

練習法

タスクシートを使用したタスク

どんなタスクなのか書かれていたり、ヒントが書かれていたりもします。タスク中心の教授法なので、タスクを中心に練習するのは何もおかしなことではありません。

長所

流暢さと正確さの両面を扱える

フォーカス・オン・フォームの考え方通りですね。

短所

言語を体系的に扱いにくい

文型を順番に勉強していくというものではなく、タスクの中で勉強していくので体系的に満遍なく勉強していくのは難しいということだと思います。

ナチュラル・アプローチの前に

ナチュラル・アプローチはタスク中心の教授法とはあまり関係はないのですが、ページの関係で一緒に扱うことにしました。しかし、思いの外この記事全体で長くなってしまったことだけご了承下さい。

さて、ナチュラル・アプローチはナチュラル・メソッドと名前が似ているから混同しやすいと言うことで、以前名前だけ出したことがあります。

 

ナチュラル・メソッドとは

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こちらも第二言語習得に関係があります。

テレルがクラッシェンのモニター・モデルを応用させて開発した教授法です。

この教授法はモニター・モデルをしっかりと理解しておけば難しくないので、ナチュラル・アプローチを見ていく前に、モニター・モデルについて見ていきましょう。

モニター・モデル

クラッシェンモニター・モデルと呼ばれる第二言語習得で考慮すべき5つの仮説を提唱しました。

習得・学習仮説、自然順序仮説、モニター仮説、インプット仮説、情意フィルター仮説です。

それぞれどんなものなのか見ていきましょう。

習得・学習仮説

習得と学習は似たような言葉ですが、ここではコミュニケーションの結果として無意識に起こる「習得」と文法を学んだ結果としての意識的起こす「学習」は独立したもので、学習した知識は習得した知識につながらないとするものです。

そうなると学習しても意味ないのかと思ってしまいそうですが、この仮説は批判されることが多いそうです。

自然順序仮説

これは目標言語の構造やルールは一定の順序で習得されるというものです。

複雑すぎる文法から学んでもわかりにくく、わかりやすいものから徐々に複雑なものに移行させていくというものだと思っています。

基礎から応用へといった感じだと思います。

モニター仮説

これは「学習」によって得た知識を使って、修正するというものです。

自分のミスに自分で気づけるようにモニタリングするということですね。

これには条件があり、それは十分な時間があり、形式に焦点が当てられていて、適切な規則を知っていることです。

口喧嘩した後で、ちょっと言いすぎたなと冷静に自分をモニタリングできるときはだいたい時間が経ったときですし、自分で書いた英作文をチェックするときはわざわざ意味は確認しません。文法をチェックすると思います。さらに、全く知らない言語をチェックしてと言われてもチェックしようがありません。知識がある言語だからこそチェックができるというものです。

インプット仮説

これは第二言語習得のためには、自分の言語能力よりすこし上のレベルが含まれるインプットを与えられるといいというものです。

このことを「i +1」と言います。

imput」の「i」に「1」レベル高いと覚えましょう。

理解可能なインプットが与えられると、自然に「習得」されるというものです。

この仮説が面白いのは話せるようになるのはインプットをすればいいということです。

情意フィルター仮説

この「情意」という言葉はどこかで聞いたことがありますね。

情意ストラテジーのところで勉強しました。

 

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簡単に気持ちのことですね。

学習者の気持ちによってインプットの量が変わるということです。

ポジティブな気持ちで勉強するとインプットが捗り、ネガティブな気持ちで勉強するとインプットが捗りません。

どんな学校にも授業を聞いただけでテストで満点をとる人がいますが、そんな人のことを思い出してしまいます。

逆に全然やる気がなかったり、強制的に勉強させられてもぜんぜん頭に残らないのもこのせいなのでしょう。

ナチュラル・アプローチ

上のモニターモデルさえ理解してしまえば、ナチュラル・アプローチはなんてことはありません。

まずナチュラル・アプローチでは「習得」は「学習」より優れており、聴解を優先させると考えます。

つまりこれは、無意識的習得は意識的学習より優れているということです。

それでは「学習」ではなく、「習得」させるにはどうしたらいいのでしょうか。

それはモニター・モデルにヒントがあります。

インプットを大量に与えてあげればいいのです。それではどうやってインプットを与えるか。それは口頭でです。つまり、聴解を優先させてあげるということです。

さらにインプットを効率よくさせるためには、リラックスさせてあげればいいですよね。

さっくりまとめると、ナチュラル・アプローチリラックスした状態で大量のインプットを与えると、習得できるということです。

 

到達目標

コミュニケーション能力の向上

聴解を優先させるのに、コミュニケーションできるのかと思ってしまいますが、話したり、書くことは学習が進むと自然に身につくものとナチュラルアプローチでは考えます。個人的にはこれも自然順序仮説なのかなと思うのですが、みなさんはどう思いますか。

教材・教具

音源を使ったLL

聴解優先だから音源を使っているLLで勉強すればいいというように考えることもできますが、せっかく大金をかけてオーディオリンガルのときに作ったLLをそのまま使おうと言う意味合いが近いのかなと思っています。赤本にはコミュニカティブ・アプローチのところにも音源を使ったLLとあるので、こちらも同じ理由だと思っています。

練習法

リラックスした状態で教師がインプットを口頭で与える

主にインプットが練習です。なぜならインプットをすれば、「習得」できるからです。(インプット仮説)

そして聴解を優先させるので、口頭でどんどんインプットを与えていきます。

さらにリラックスした状態で行うので、インプットの効率もいいです。(情意フィルター仮説)

長所

大量のインプットを与えられる

過度な緊張がないこと

練習法のメインはインプットなので、大量のインプットが与えられます。ここではインプットだけで習得ができるという前提なので、アウトプットはしなくていいのかということは別の議論になります。

リラックスして勉強するがいいことなのはとくに説明は要らないと思います。

短所

学習者の発話量が少ない

インプットがメインですから、自然と発話量が減ってしまいますね。

まとめ

〜まとめ〜
タスク中心の教授法
コミュニケーション重視かつ文法も
ロングのインターアクション仮説
フォーカス・オン・フォームナチュラル・アプローチ
リラックスして大量のインプットすれば習得できる
モニター・モデルの応用

おわりに

今回はちょっと長くなってしまいました。

休憩を挟みながら目を通してもらえたらと思います。

赤本にはがっつりと説明がないので、何を覚えていいのかわからずとにかく暗記へと走ってしまいがちですが、今日のどちらの教授法も第二外国語習得の単元といっしょに勉強することで頭に残りやすくなるのかなと思います。

 

 

高見澤孟著(2018)『新・初めての日本語教育2[増補改訂版] 日本語教授法入門』アスク出版
西口光一著(2017)『日本語教授法を理解する本 歴史と理論編 解説と演習』バベルプレス
ヒューマンアカデミー著(2018)『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第4版4刷』SHOEISHA

 

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