新・教授法④〜オーディオ・リンガル・メソッド〜

今回は教授法の中でも一番苦手な意識がある人も多いと思われるオーディオ・リンガル・メソッドについて見ていこうと思います。

有名な教授法なので覚えることが多いと思いますが、核となるキーワードを押さえておけば暗記する量は減らせます。

オーディオ・リンガル・メソッドとは

オーディオ・リンガル・メソッドは前回のアーミー・メソッドの進化系なので、基本は似ています。

アーミー・メソッドは戦時中だったのに対し、オーディオ・リンガル・メソッドは戦後です。

 

アーミーメソッドとは

教養重視だった教授法が批判され、あたらしく登場したナチュラル・メソッド。 これからはどんどんいろいろな直接法が登場してきます。 実はナチュラルメソッドも直説法なのですが、赤本では今回紹介する直接法と分けられています。 &n[…]

 

戦後のアメリカにとって大きかったことといえば冷戦です。

冷戦とは簡単にソ連(ロシア)とアメリカが敵対していたことです。

1957年にソ連が宇宙開発のため最初の人工衛星スプートニクの打ち上げを成功しました。

これはすごいことですよね。ですからアメリカは敵対している国がすごいことをしている、負けるわけにはいかないと考えます。

それではどうすればいいのかと考えると優秀な人材を確保したいですよね。より優秀な人材を世界中から集めるために、外国語教育に力を入なければと作られた教授法があります。それが、オーディオ・リンガル・メソッドです。

日本語教育能力検定試験ではミシガン大学のフリーズが提唱したことは覚えておきましょう。

ソ連との敵対という背景は押さえておきたいです。(冷戦→冷たい→凍る→フリーズという覚え方はどうでしょう)

冷戦とは冷たい戦争と言われているように戦争です。負けるわけにはいきません。ということでアメリカは全力で外国語教育を改革します

アーミーメソッドの時の構造言語学と当時の主流の心理学である行動心理学に基づいて作りました。

この構造言語学行動心理学というのもポイントです。

それでは構造主義と行動心理学とは何なのでしょうか。

構造言語学

構造言語学という言葉の中に「構造」という言葉があります。

構造という言葉から、パズルをイメージできればわかりやすいのかなと思います。

つまり、構造言語学とは簡単に、文は分解できるということです。

文は語に分解ができ、語は音に分解できるということです。(本当はもうちょっと細かく分解します)

例えば、下の文を見てみましょう。

私は学生です。
という文は、「私」「は」「学生」「です」に分解ができます。
そして「学生」という語をいろいろな言葉に変えてみます。
会社員です。
医者です。
言葉をパズルのように入れ替えたら、違う意味の文が完成しました。
次は「私」という語を変えてみます。
学生です。
田中さん学生です。
これも同様に違う意味の文が完成しました。
ここから、「AはBです。」という部分の「A」と「B」にあたる部分に適切な言葉を入れると「A=B」の意味になることから、「〜は〜です」を文型として、文型を勉強していこうとなります。
これが構造言語学の考え方で、文型という考え方が大切になってきます。
そして、
そしてもう一つ、正確性というのも忘れてはいけません。
パズルのようなものだからこそ少しのズレがあってはうまくピースは合わなくなるように、構造言語学は正確さという言葉もキーワードになってきます。

行動心理学

行動心理学は文字通り心理学なので、言語学習の時にどうしたら効率よく定着するかということに関係があります。

行動心理学では「刺激」「反応」「強化」によって、習慣ができると考える心理学です。

簡単にいうと、教師の言ったこと(刺激)に対して、そのまま真似していうこと(反応)を繰り返すと話せるようになるということです。

オーディオ・リンガル・メソッドの特色

到達目標

話せるようになること

一応話せるようになるのが目標です。実用のための教授法ですから。

どうして「一応」なのかは短所のところを見てください。

教材・教具

音源を使ったLL(ランゲージ・ラボラトリー)

ランゲージ・ラボラトリーとはそのまま翻訳すると、言語の研究室といったところでしょうか。

イメージとして教室の中の机にパソコンが何台も置いてあり、ヘッドホンを使って言語を聞いたり話したりといった言語の学習をするための部屋です。

教室にパソコンが何台もある設備、、、と考えると高そうじゃないですか?高いとそんなにいろいろな場所に作れるのかと思ってしまいます。

しかし、これが最初のアメリカの全力というところとつながってきます。

ソ連に勝つためのアメリカの全力だからこそお金をたくさんかけることができたと考えれば良いと思います。

練習法

パターンプラクティスやミニマルペアなどの練習

ミムメム練習

パターンプラクティスというのは、反復練習、代入練習、完成練習、拡大練習、結合練習、応答練習などがあります。

それぞれを簡単に紹介すると、

反復練習

反復練習とは教師の言ったことをそのまま繰り返すことです。

代入練習

代入練習とは教師の言ったことの一部を他の言葉に置き換える練習です。

<代入練習の例>
教師:「公園へ行きます。」「レストラン」
学生:「レストランへ行きます。」

完成練習

完成練習とは不完全な文を完全な文にする練習です。

<完成練習の例>
教師:「とても疲れていたので、・・・・」
学生:「とても疲れていたので、すぐに寝てしまいました。」

拡大練習

拡大練習とは徐々に文を長くする練習です。

<拡大練習の例>
教師:「行きました。」
学生:「行きました。」
教師:「公園へ」
学生:「公園へ行きました。」
教師:「今朝」
学生:「今朝公園へ行きました。」

結合練習

結合練習とは複数の文を一つにする練習です。

<結合練習の例>
教師:「お風呂に入りました。寝ました。」
学生:「お風呂に入って寝ました。」

応答練習

応答練習とはその名の通り、質問に答える練習です。

<応答練習の例>
教師:「このあと何をしますか。」
学生:「このあと昼寝をします。」

 

さて、話を戻すとこのような練習のことをパターン・プラクティスと言います。構造言語主義に基づいているからこそ、パターンを大切にして練習します。特に代入練習はそれが顕著に現れていると思います。

そして、ミニマル・ペアというのは1つだけ異なる音のペアのことです。

例えば、ボールとボウルのようなものです。

「ボル」と「ボル」の比較なので、つまりこれは「お」と「う」に注目しています。これは文を分解して分解して残った音に注目しているので、構造言語学の考え方に則っています。

次はミム・メム練習ですが、英語が分かる人は意味を推測できますが、そうでない人は「真似して覚える練習」と覚えましょう。

構造言語学は「正確さ」もキーワードでした。

とにかく正確に言いたいということで会話文を徹底的に口頭練習します。

教師やテープなどを聞きながら徹底的に真似をしていきます。

何もかも正確でありたいので、リズム・イントネーション・話すスピードまでも正確になるように真似をします。

このような練習をミム・メム練習と言います。

長所

文法の体系的学習ができる

反復による記憶や正確さが期待できる

文型を中心に学習をしていくので、基本文型からその発展へのように体系的な学習ができることと、練習法のところで触れたような正確さが期待できるのが長所です。

短所

反復練習が単調

形を重視しているので、意味の学習が不足し、コミュニケーション能力が育ちにくい

反復で口頭練習をするので、退屈なものになってしまうのは想像するのは難しくないと思います。

話せるようになるために教授法なのに、意味の学習が疎かになり、結果コミュニケーションができないという本末転倒な感じがしてしまいます。

まとめ

まとめるとこのようになります。

〜オーディオ・リンガル・メソッド〜

背景・・・ソ連の宇宙開発
LLの発展
構造言語学 パズルのような構造
パターン・プラクティス・ミニマル・ペア
正確さ
ミム・メム練習
行動心理学・・・刺激・反応・強化
習慣を作り話せるように

おわりに

いかがでしたか。少しでも理解が深まれば幸いです。

かなり日本語教育能力検定試験の中でも比重が大きいと思うので、覚える数も多く思えてしまいますが、しっかり核となるものを押さえておけば、連想させることが可能です。

このあとオーディオリンガルは批判されていきますが、優れた点もあり特に日本語教育とパターンプラクティスは切り離せないと思います。

ただ勉強したからパターンプラクティスをするのではなく、どんな意図を持って練習するかということまで考えていくことをしていかなければならないなと思いました。

 

 

 

小林ミナ(2019)『日本語教育よくわかる教授法』アルク
西口光一著(2017)『日本語教授法を理解する本 歴史と理論編 解説と演習』バベルプレス
ヒューマンアカデミー著(2018)『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第4版4刷』SHOEISHA

 

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