言語記号の特徴⑦〜有標・無標・中和〜

言語記号の特徴である有標・無標・中和という言葉についてみていこうと思います。

日常生活で有標、無標なんていう言葉は全く聞かないので、非常にわかりにくい範囲ですが、

丁寧にみていくと複雑ではないので、がんばっていきましょう!

 

もくじ

無標

無標というのは文法や語彙などの対立する形式において、制約が少ないもののことです。

さっぱり分からないですね。

制約が少ないというのは、無標の漢字から、クセが「無」いとイメージしましょう。

クセがないということは特に違和感などなく、すんなりと受け入れられるということです。

例えば、

日本語において、「食べます」と「食べる」の2つの動詞について、「食べる」が無標です。

国語辞典で動詞を調べるとき、「食べる」で探します。「食べます」で探しても出てきません。

また、

「タピオカミルクティーを飲みに行くときに使う動詞って何だっけ」と人に聞くとき、「それは『タピる』じゃないですか。」と返ってくると思います。「それは『タピります』じゃないですか。」と返す人はあまりいないのではないでしょうか。つまり、動詞は「〜ます」という形より「〜る」や「〜う」のような言い切りの形の方がしっくりきます。

このように、「食べる」と「食べます」の2つの動詞を考えると、「食べる」の方が、違和感やクセがない、つまり無標だと言えます。

有標

有標とは文法や語彙などの対立する形式において、ある特徴を積極的に表すもののことです。

これもよくわからないが、簡単にいうと、無標の反対ということです。

先ほどの「食べる」「食べます」の例を使うと、「食べる」が無標でした。

よって「食べます」が有標になります。これは「食べます」には丁寧の意味を積極的に表すからと考えられます。

これはある種のクセが「有」ると捉えることができます

他にも、「食べる」と「食べない」を比べると、「食べない」には否定の意味が加わるので、有標だと言えます。

英語で、lionとlionessという単語があります。

lionはライオンという意味で、lionessは雌ライオンという意味です。lionessは雌という意味を積極的に表すので、有標だと言えます。

この例から、日本語でも、看護師と看護婦のように、無標と有標の例を見つけることができます。

中和

次は中和についてですが、中和と聞くと、言語学について無視して考えると、例えばプラスとマイナスが混ざってプラスでもマイナスでもなくなったときに中和されたなどと使ったりします。

同じように考えて、「食べる」「食べます」はそれぞれ無標、有標でしたが、それらが関係なくなったとき中和されたことになります。

まだちょっと分かりにくいので具体例をみてみましょう。

まずは、次の2つの例を比べてみましょう。

・私はプリンを食べます。
・私はプリンを食べる。

前者は丁寧な印象を受けます。これは、「食べます」は有標で丁寧の意味を表すからでした。

次は、日本語の連体修飾節、つまり「私が食べるプリン」のように動詞が名詞を説明する形をを考えてみると、

・私はプリンを食べます。 →  私が食べるプリン
・私はプリンを食べる。  →  私が食べますプリン

後者は間違った日本語となります。

後者は間違っているので、丁寧かどうかは以前の問題になってしまいました。

となると、前者の表現しか使われなくなるので、有標と無標の区別がなくなってしまいました。

このように、ある条件の中で、有標、無標の区別がなくなってしまうこと中和と言います。

関連

今回扱った言葉はなかなか大変だったと思います。その内の1つである有標という言葉は、検定試験では言語習得の範囲でもう1ヶ所出てきます。ここでは簡単に扱います。

第二言語を習得するときに、第一言語が影響していることを説明するものに、有標性差異理論というものがあります。

内容は第一言語より有標なら、第二言語習得は難しく、第一言語より無標なら、第二言語習得はそれほど難しくないというものです。

例えば、第一言語が日本語で、第二言語が英語と韓国語の二人がいたとします。

英語は日本語とは語順が違うことから、語順に関して有標、韓国語は日本語と語順が似ていることから、無標のように考えることができると思います。語順という1点からだと、韓国語の方が英語より易しいと言えます。もちろん要素はとても多いので、本当にどちらがなどとは言えませんが。

有標性差異仮説というものは、別の記事で解説しているので、ぜひそちらも確認してみてください。

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おわりに

今回は有標・無標・中和についてみてきましたが、正直な話、私も大変でした。私の持っている本では触れていないものもあり、現役の時はそこまで深く考えていない用語でもありました。

ですが、難しいからといって勉強しなくていいものでもありません。かといって、定義も丸暗記する必要もないと思うので、研究者になりたいという方でなければ、こんな感じだったなあとイメージできるようにしておきましょう。


参考にした本

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この記事を書いた人

日本語講師として日本語学校に勤めています。日本語教育能力検定試験や日本語教育や現場についていろいろアウトプットしていこうと思っています。

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