形態体系④〜日本語教育と形態論〜

いままで形態論について軽く触れれきましたが、実際には日本語教育とどう関わってくるのでしょうか。

とても個人的には興味がある内容になっていますが、同時に頭を悩ませる内容にもなってきます。

どうして頭を悩ませてくるのでしょうか。

見ていきましょう。

異形態って難しい

「雨雲」という言葉。これは何と読みますか。

・・・

当然、「あまぐも」ですよね。

それでは、「雨」と「雲」と別々にして考えましょう。

もしあなたが初級クラスを担当し、漢字を教えます。そのクラスで「雨」と「雲」という漢字を導入しなければなりません。

おそらく、「雨」を導入するとき、初級のテキストには読み方は「あめ」としか書いていないと思います。雲も同様に「くも」としか書いていないと思います。そして導入を無事に終えることができて安心していると、衝撃の出来事です。

よく勉強ができる優秀な学生の一人が、「先生、『雨雲』はどうして『あまぐも』と言いますか。」と質問してくるのです。

朝、一人で水入らずで楽しむモーニングティータイムの最中に大地震が起こってしまったかのような衝撃が走ります。

その質問にとっさに対応ができなければ、その日1日中反省してしまうかもしれません。

このように、日本語の母語話者には「あめ」→「あま」、「くも」→「ぐも」の変化は当然でも、学習者からしたら本当に難しく感じてしまいます。これは異形態のことですよね。

この読み方が普通と違って変わってしまうというのが、大きく日本語教育に関わってきます。

形態素というより、異形態でしたね。

 

異形態の説明はこちらです

今回からは形態論について少しずつみていこうと思います。 今までは音声でなかなか大変でしたが、形態論はちょっとだけイメージしやすくなると思います。 ただ日本語教育能力検定試験では形態論の全てを扱うわけではなく、むしろ一部だと認識し[…]

 

異形態の音声的変化

それでは、いつ、この音声の変化が起きるのかということですが、これは他の形態素と隣り合う場合です。

「今日は雨だ。」の文のように、他の形態素と一緒に使われていない場合は、「今日は雨(あま)だ。」と読むことはありません。

そしてこの異形態の音声的変化はパターンのようなものがあります。

今回は代表的なものを紹介します。

連濁

連濁とは「折り紙」や「本棚」のように、形態素が前につくとき、後ろの形態素の無声子音が有声子音に変化することです。

orikami ではなく、origami となります。 hontana ではなく、hondana となります。

「○」の「」の無声子音が有声子音に変わりますね。

折り紙では、[k]が[g]に、本棚では、[t]が[d]に変わっていますね。

ただし、全ての語に連濁が起きるわけではないです。

「白菜」は「はくさい」であって「はくざい」ではないですよね。例外は多いと思います。

転音

転音とは「酒屋」や「雨雲」のように、形態素が後ろにつくとき、前の形態素の最後の母音が変化することです。

sakeya ではなく、sakaya となって、amegumo ではなく、 amagumo となります。

○」の「」の母音が変化しています。

酒屋は[e]が[a]に、雨雲も[e]が[a]に変わっていますね(雨雲は連濁も起きていますが。)。

そして、転音も同様に全ての語に起こるルールではありません

どうして頭を悩ませるのか

日本語教育能力検定試験の合格が目標なら、連濁、転音の上記の説明がわかっていれば何も問題ありません。

しかし、最初に書いたように、実際このルールを学生に教えるとなると、上記のことだけでは足りないように思います。

「このようなときに、音が変わることがあるよ」といっても、具体的にいつ起こるのか教えてとほしいという学習者もいることでしょう。ある程度体系化してくれている研究もありますが、それをそのまま伝えることもわかりにくいしある程度の取捨選択なども必要になってきます。

どのように情報を取捨選択し、どのようにわかりやすく伝えるか。これにはずっと頭を悩ませ続けなければならないと思います。検定試験のその先をしっかり見据えるならば、しっかりと考えてもいいことだと思います。

ただ、当面は合格を目指していきましょう!!

おわりに

今回は異形態のパターンを2種類紹介しましたが、このように複数の形態素をくっつけると(語を合成すると)、読み方が変わることが多々あります。これを変音現象といい、連濁と転音を含め、8種類あるそうです。いつかまた記事に出したいと思っています。

形態体系については、この回で終わりになります。

 

 

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