言語とその性質②〜恣意性と線条性〜

今回は言語の性質の続きで、「恣意性」と「線条性」についてみていきたいと思います。

前回の能記と所記ほどではないと思いますから、肩の力を抜いていきましょう。

言語がもっている性質②:恣意性

「恣意的(しいてき)」という言葉を聞いたことがありますか。

これは「自分勝手」という意味があります。

「恣意的な人」は自分勝手な人ですし、「恣意的な判断」とは他の意見などを参考にせずに出した判断ということになります。

それでは言語の恣意性というのは何が『自分勝手』なのでしょうか。

言語の恣意性とは能記と所記の関係は何かのルールに基づいて決められているわけではないということです。

前回の例だと、

踏切の遮断機のカンカンという音は能記で、電車が来るから、踏切を渡るなが所記でした。

 

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この「カンカンという音」と「踏切を渡るな」はたまたま選ばれた組み合わせに過ぎないということなのです。

今でこそ、遮断機の音と、踏切をわたるなという意味は常識として体に染み込んでいますが、

私たちがまだ踏切というものが存在していなかった時代に新しく『踏切』なるものを開発すると仮定してみましょう。

べつに「踏切をわたるな」という意味を表すには「カンカンという音」じゃなくてもよいのでは、と思いませんか。

例えば、とても高いキーンという音や頭に響くようなゴーンという音でも良かったはずです。

たまたま偶然に「カンカンという音」が選ばれたというだけなのです。

この能記と所記の関係の偶然の関係性恣意性ということなのです。

この「たまたま」「偶然に」というのが大切で、「論理的な関連性はないけど」や「私の本能がそういっている」のようなところから自分勝手というイメージを持てればいいのかなと思います。

言語の例が分かりやすいと思います。

「イヌ」という意味(所記)を表すために、

日本語ではたまたま「犬」という言葉(能記)が選ばれ、

英語ではたまたま「dog」という言葉(能記)が選ばれただけです。

これも言語の恣意性の一例だと思います。

言語が持っている性質その③:線条性(せんじょうせい)

「線条」とは何?と思ってしまいますが、漢字に「線」という漢字があることから、線のような性質があるということです。

例えば、「ありがとう」という言葉は「あ」「り」「が」「と」「う」とこの順番で聞くからこそ、「ありがとう」だとわかるのであって、

「う」「り」「あ」「が」「と」の順番で聞いても「えっ?」と意味が分からなくなってしまいます。

つまり、言葉は時間に沿って、順番に聞くから意味ができるんだという性質と言ってもいいかもしれません。

その時間の流れや順番というものから矢印や線が連想できたら、もう大丈夫です。

だから、この性質を線条性と呼ぶのだと思います。

ただ、今みなさんは文字を見ているので、「う」「り」「あ」「が」「と」と見ても一瞬で「ありがとう」だとわかった人もいると思います。これは脳が頑張って推測する能力があるからです。

これを会話に置き換えてみるとさっぱりだと思います。

私個人的に面白そうなのは、2人集めて、それぞれに「い」と「か」を同時に言ってもらって、それが「かい」と認識されるのか、それとも「いか」と認識されるのか、気になるところです。

たとえば、「い」の人が、ほんの少しでも早く言ってしまったなら「いか」と聞こえるかもしれませんし、聞く人が「か」の人により注意を払っていたなら、たとえ同時に言っていても「かい」と聞こえてしまうかもしれません。

おわりに

今回は恣意性と線条性の2つの性質を勉強しました。

丸暗記だと大変かもしれませんが、この性質の言葉の意味や漢字を知っていれば、十分にその性質の内容まで推測することは可能でした。

覚えられなくても、推測できる。この考え方が、検定試験でも大切になると思うので、一歩一歩頑張っていきましょう。

 

 

 

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