第二言語習得①〜モニターモデル〜

今回からは第二言語習得についてみていきましょう。。

第二言語習得は、第一言語習得と同じように3つのポイントがありますが、やや内容が濃いです。

我々の目指すのは、日本語教師なので、第一言語習得ではなく、第二言語教育に関わってくるからです。

そんなこともあり、今回はいつもよりボリューミーな内容になっているので、休憩を挟んだりしながら目を通してもらってもいいと思います。

まずは第一言語習得との違いについてみていきましょう。

もくじ

第一言語習得との違い

今回から見ていく第二言語習得は、「第一言語習得と同じじゃないの?何が違うの?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、大きな違いがあります。

それは、

①すでに1つの言語体系を獲得していること。
②すでに認知能力が発達していること。
③習得の状況には個人差があるということ。

が主な違いです。

第一言語習得では、いわば、0を1にする内容でしたが、第二言語習得では、1を2にする内容ですから、大きな違いだと思います。

第一言語習得と第二言語習得は違うものなので、異なるアプローチが取られるのです。

どんなアプローチが取られるのか、3つの大きな理論があるので、第二言語習得ではその3つをしっかりおさえるようにしましょう

第一言語習得でも3つの説が登場しましたね。混同しないようにしましょう。

モニターモデル

まず1つ目は、モニターモデルです。今回はこの1つ目の理論だけで終わります。

モニターモデルは、クラッシェンの理論です。

5つの仮説をまとめてモニターモデルといいます。

①習得・学習仮説
②自然順序仮説
③モニター仮説
④インプット仮説
⑤情意フィルター仮説

習得・学習仮説

習得・学習仮説とは、学習を通して得た知識は、無意識に使えるようにはならないという仮説のことです。

「習得」「学習」という言葉を聞くと、「習得も学習も同じ意味でしょ?」と思う人もいるかもしれません。

なぜなら、日常生活でこの言葉の意味を理解しておく必要はほとんどなく、大体同じと思っておいても問題はないことが多いからです。しかし、この仮説では、習得と学習はまったく異なるものだと考えるので、区別をする必要があります。

習得とは、無意識的に身につけることです。

学習とは、意識的に身につけることです。

つまり、自然なコミュニケーションのような「よし、勉強しよう!」と思わなくても学ぶことが習得で、教室や本などのような「よし、勉強しよう!」と思って学ぶことは学習ということです。

学校の授業や単語帳などの勉強だけしても英語が話せるようにはならなかったり、英語の成績が悪く、勉強が嫌いなのに留学して帰ってきたら流暢に話せるようになっているようなイメージをしていただくとわかりやすいかなと思います。前者が学習、後者が習得ということですね。

話を戻して、習得・学習仮説とは、学習と習得は全く異なるプロセスで、学習しても習得につながらないよと考える仮説のことです。本を買って勉強しても意味ねーぞと言われているようで嫌になってしまいますね。

このことから、クラッシェンは、学習しても使えるようにならないよということで習得を重視していたことがわかります。

つまり、

学習より習得の方が大切だということですね。

ちなみに、学習は習得に影響を与えないという立場は、ノン・インターフェイスの立場と呼ぶので頭の片隅に置いておきましょう。(今回は扱いません。)

自然順序仮説

自然順序仮説は、言語習得には習得のための自然な順序があるという仮説です。

こちらの仮説は比較的漢字からも意味の推測がしやすいのかなと思います。

例えば、「と」「ば」「たら」「なら」の文法について、個人的な経験上、「たら」の習得がほかの文法に比べて早い気がします。

これは、自然順序が関係しているように思います。

面白いのは、自然順序は教える順番には関係ないクラッシェンは言っていることです。

つまり、「たら」を最初に教えようが、最後に教えようが「たら」が最初に使えるようになるいうことです。(「たら」の習得順序が早そうというのは個人的感覚なので間違いかもしれません)

モニター仮説

モニター仮説とは、学習された知識によって、発話内容のチェックが行われるという仮説です。

ちょっとわかりにくいので、例を挙げましょう。

突然ですが「どうしてあんなことしてしまったんだろう。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。」と後悔することってありませんか。

その瞬間は何も気にせずにしたり言ったことでも、後から冷静になって考えると言わなきゃよかったことなのにどうしてあんなひどいことを言ってしまったんだろうととても恥ずかしくなったりします。

逆もしかりで、過去の自分ナイスだ、よくやったと思うこともあります。

友人に冗談のつもりで言ったことでも、ちょっと言いすぎたかもしれないなと帰り道に思い始めてモヤモヤしたりすることもあります。

簡単にいうとこれがモニターをしている状態です。もう一人の冷静な自分による客観視といってもいいかもしれません。

つまり、モニター仮説とは、学習者はもう一人の冷静な自分によるモニタリング(監視)をしているということです。

先の例では発言内容ですが、このモニター仮説では、学習した知識に基づいて文法をチェックするものだと思ってください。以下のような感じです。

Aさん     「大丈夫ですと思います。」
もう一人のAさん「・・・(あれ?『と』の前は、ます形じゃなくて普通形って習ったな?・・・)」
Aさん     「大丈夫だと思います。」

発話する前後に、モニター(文法チェック)は働き、正しい文法の文を発話前に修正したり、後から文法が間違っていたと気づけたりします。モニターはとても便利な機能に思えますね。

もうひとつ例を見てみましょう。

もし、あなたが英語が苦手だとしましょう。そんなあなたは急に英語で道を聞かれたらどうなってしまうでしょうか。

おそらくパニックで全身から汗が噴き出る中、とにかく相手が何を言いたいのか全神経を研ぎ澄ませ、なんとか身振りや手振りや知っているいくつかの単語のみでその緊急事態を乗り切ろうとするでしょう。

何が言いたいのかというと、何かを伝えようとするときは、正しい文法なんて気にしないわけです。つまり、モニターが働きません

逆に文法に集中して、正確性を高めようとするとどうなるでしょうか。

学生時代を思い出してみましょう。何年も何年も英文法の勉強をしてきました。正確性に関してはばっちりです。

しかし、いざ会話をして伝えたいことが伝えられるのかと言われれば、単語1つずつゆっくり思い出しながら言わなければ文が作れません。自然な会話とは程遠いです。

私 「アイ・・・イート ・・違う、 アイ エイト サンドイッチ えっと・・・ イエスタデイ。」
(I ate a sandwich yesterday.と言おうとしています)

このように2つの例から、伝えようとすると正確性は失われ、正確性を高めようとすると、自然な会話ができなくなる。どっちつかずです。

モニターの機能というのはその程度の機能にすぎないということです。

しかも忘れてはいけないのは、最初に書いたように、学習して知識として身につけなければ、モニターは働きませんでした。

ちょっと長くなってしまいましたね。まとめます。

学習して知識を蓄えることで、自分の文法についてチェックできるようになりますが、伝えようと頑張れば頑張るほど、モニターは働かなくなってしまいます。

1つ目で扱った習得・学習仮説を思い出してください。

クラッシェンは、習得が大切だと言っていました。それがここにも関連していることは気づけましたでしょうか。

学習してもその程度のモニター機能だからこそ、学習よりも習得のほうが大切だという仮説のつながりがみえてきましたね。

インプット仮説

インプット仮説とは、「 i + 1」の言語項目が含まれるインプットがされると、第二言語習得が進むという仮説です。

「はあ?」という感じですよね。さっぱりわかりませんね。

そんな時はひとつずつ確認することが大切です。

「 i 」というのは、input、つまり、インプットのことです。基本的には聞くことです。

そして「 + 1」というのは、ひとつ上のレベルということです。なんのレベルかというと、インプットの内容のレベルのことです。

つまり、第二言語習得を進ませるためには、今の自分の言語能力よりも「ひとつ上のレベルのインプット※」(i + 1)が必要だという仮説がインプット仮説だということです。

※ひとつ上のレベルのインプットは理解可能なインプットという言い方もします

難しそうに聞こえますが、難しいことはありません。

小学生に大学の講義を受けさせてみたり、逆に大学生に小学校の授業を受けさせるとどうなると思いますか。

小学生は何の勉強をしているのかわからず、大学生は何も学ぶことはないので、どちらにとってもなんのためにもなりませんよね。

このように言語習得のためには、簡単すぎず、難しすぎず、自分のレベルより少しだけ高いレベルのインプットが大切だという説がインプット仮説です。

情意フィルター仮説

情意フィルター仮説というのは、心理的な要因が、インプットの量を左右させるという仮説です。

ちょっとだけ難しく書いてしまいましたが、こちらも何も難しいことはありません。

情意、つまり、気持ちが勉強の効率を上げたり、下げたりするということです。

なんとなく将来役に立つかもしれないと始めた言語の勉強と、外国人の恋人と話すために始めた言語の勉強とどちらが吸収が早いでしょうか。

また、自分が勉強したことに自信がもてない人と、自信たっぷりな人とどちらがより早く身につくでしょうか。

ほとんどの方が、どちらの例も後者のほうが早く身に付くと考えたのではないかと思います。

このように気持ちの面でも、習得に影響がでるという説が、情意フィルター仮説です。

まとめ

今回は長くなってしまいましたので、しっかりまとめようと思います。

クラッシェンのモニターモデル
= ①習得・学習仮説
+ ②自然順序仮説
+ ③モニター仮説
+ ④インプット仮説
+ ⑤情意フィルター仮説

※モニターモデルとモニター仮説の違いに気をつけましょう。

<習得・学習仮説>
  「習得 ≠ 学習」 であり、「習得 > 学習」 である
<自然順序仮説> 
   習得には自然な順序がある
<モニター仮説>
   文法や語彙のチェック機能がある
<インプット仮説>
   少し上のレベルのインプットで習得される
<情意フィルター仮説>
   心理的な要因が習得に影響する

<<まとめのまとめ>>
クラッシェンのモニターモデルでは、第二言語習得には習得と学習の2つの面があり、学習は自分の文法や語彙をチェックする程度の機能しかないので、第二言語習得させるためには自然な順序の内容を学習者の心理的な負の要素を取り除いて、学習者のレベルに合ったインプットを与えて習得をさせていくのがいい。

今回はボリュームが大きかったので、5つの仮説をまとめた、まとめのまとめまで作ってみました。

おわりに

第二言語習得のモニターモデルは、上記でおしまいですが、この理論が影響を与えた教授法も押さえておくとより理解が進むと思います。

モニターモデルを応用してできた教授法はナチュラルアプローチでしたね。

あわせて読みたい
新・教授法⑥〜タスク中心の教授法とナチュラルアプローチ〜 日本語教育能力検定試験のタスク中心の教授法とナチュラル・アプローチについてできるだけわかりやすく説明していきます。

さて、今回は第二言語習得の1つ目のモニターモデルでしたが、まだあと2つあります。

頑張っていきましょう!


参考にした本


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この記事を書いた人

日本語講師として日本語学校に勤めています。日本語教育能力検定試験や日本語教育や現場についていろいろアウトプットしていこうと思っています。

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